伝統的工法における匠の業。

◎大分県建築士会主催の大分ヘリテージマネージャーステップアップ研修会にて本会員の二氏が発表した。
◎日 時:2015年11月15日(日)13:30 ~15:30
◎場 所:日出致道館(大分県指定史跡)
     致道館(藩校)は、本年3月末日に保存修理工事が完了した
     両氏ともに本工事に従事した技能者である。
◎講演者: イ) 致道館における保存修理の考え方。設計監理者:養父信義(YO設計代表)
      ロ) 左官土物工事の概要。左官業務:原田 進(原田左研代表)
      ハ) 古色塗装工事の概要。塗装業務:三松健次(みつまつ塗装代表)
◎講演内容
  イ) 安政5(1858)年に藩校として創立。明治4(1871)年、廃藩置県に伴い閉校。その後幾多の用途(6回)に利用され、現在地に昭和26(1951)に移設した。復原年代は明治初年の間取りを基本として復原。その保存修理の考え方は、a、建造物の履歴や所有者の思考・思い入れを把握すること。(文献調査も重要である)b、痕跡に忠実であること。C、推測や使い勝手が良い等としてリフォームしないこと。

  ロ) 左官 施工要領の説明
    * 既存土壁の調査・・・エツリ組から仕上げまで何層の工程があるか。
                使用土の品質等など。
    * 資材の調達・・・新土(既存土だけでは不足する⇒新土とブレンドする)
                出来る限り近場で探す(吟味が必要)。
               藁 切り藁。貫伏せ藁等など、良質の藁を確保する。
                 壁土拵えに3~6㎝の切り藁を混入する。土拵えは、月1回宛攪拌、その都度混入する。
                 貫伏せ藁は腰の確りした良質部分30㎝程度に切断。
                  立貫にも伏せる。
               良質の藁の確保も兼ねて、自家で稲造り(田植え・除草・稲刈り・脱穀⇒藁の調達)弟子に経験さしている。
               漆喰の原料・・・石灰と貝灰。以下を使用している。
                 石灰・・生石灰として使用。田川市田川産業。
                 貝灰・・貝殻を焼成して作る。柳川市田島貝灰工業。
    ◎ 作業工程の話から自社の宣伝までプロゼクターを使って45分間の説明。

  ハ) 古色塗りの概要説明
    何故、古色塗りを必要とするか? 破損・腐食等により、古材に新材の接合が
生まれる。新材を白木のままにしておく考えもあるが、白木のままだと古材との
コントラストが強すぎて違和感を感じる事がある。出来るだけ周囲になじませる
ようにするものである。
* 古色の材料・・・木部の塗装は、防虫や防水防腐と美装の為にされた。
     防虫防腐の主材、柿渋・弁柄・松煙・油煙・墨汁・植物油・動物油等
             外部廻りでは、キシラモン・キシラデコールも使用
* 施工方法・・・・材への色付け⇒ウエス等での擦りこみ⇒防虫・防腐剤塗布も
        叉、撥水剤の上塗りも考える。
        色見本を作成する。・・着色部材の端切れや同種材で。
* 塗布の時期と行程
        大工工事で木材加工完了時に着色(接合部分の側迄。板材は
背面まで塗る)
        大工工事で取り付け及び組立。⇒仕上げ塗りを行う。
        建具工事も同様に組立前に塗布する。
        建築現場のみでなく、各加工場に出向き塗布している。
        大工工事の作業手順によっては、塗装ネタを作り置き、大工に
        預けておくこともある。
以上。2~3の質問を受け45分の講演を修了する。

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